ご相談の内容
ご依頼者様のご家族がご来所された時点でご依頼者様は余命幾許もないという状況でした。
ご家族の方は、ご依頼者様の娘さん(前妻との間のお子さん)側との関係が良好ではないため、相続発生時揉め事が生じないようご依頼者様がご存命の間に遺言を作成しておきたいとの意向をお持ちでした。

遺言作成までの経過
時間が限られていたため、ご依頼者様の財産の確認、その評価額の算定及び公証人との打合せなどはできる限り迅速に行うようにしました。
ご依頼者様は、とても公証役場に出向けるような状態ではなかったので、公証人に入院中の病院まで出張していただきました。幸いにも当日は、ご依頼者様のお身体の調子がよかったために、遺言作成が可能な状態でした(遺言作成には遺言能力が必要となりますが、病気の影響で正確な判断ができないような状態では遺言を作成することができません。)。
公正証書遺言作成中は、遺言者、公証人、証人(本件では当事務所の弁護士2名が証人となりました。)以外の者の立ち会いを許さないということになっているので、ご家族の方にも退室をお願いして、遺言内容を確認いただいた上(読み聞け)、ご依頼者様のご署名をいただき、公正証書遺言の完成となりました。

遺言作成後の経過
ご依頼者様は、公正証書遺言作成後2週間程度でお亡くなりになりました。
そういった意味で本件は少しの時間的猶予もなかったケースということになります。
相続に絡む紛争が予想される場合には、早い段階で遺言を作成しておくことが望ましいのですが、すべてのケースにおいてそれが可能というわけではありません。
本件は、差し迫った段階においても遺言作成が可能であった1事例ということになります。

公正証書遺言作成のメリット
公正証書遺言とは、原則として、遺言者が、公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づいて公証人が、遺言者の真意を文章にまとめ作成するものです(本件の場合は、事前に文案を作成した上で、公証人が読み聞けを行い、遺言者の確認をとるという方式で行いました。)
公正証書遺言を作成する公証人は、裁判官経験者等が多数を占めるため、法的に問題のある遺言や方式に不備のある遺言が作成されるおそれがありません。
また、自筆証書遺言と異なり、家庭裁判所での検認の手続を経る必要がないので、相続開始後速やかに遺言内容を実現することが可能です。また、作成した遺言の原本が公証役場に保管されるため、遺言書の破棄や紛失を防ぐことができます。
自筆証書遺言は全文を自らの手で書かなければなりませんが(ワープロソフトでは効力が認められません。)、公正証書遺言では、公証人による代書が認められています。
病院等への出張作成が可能なことは前述のとおりです。

公正証書遺言作成のデメリット
単純ではありますが、費用がかかります。
出張をお願する場合には、出張料が加算されます(ちなみに、費用は現金払いのみということです)。
また、公正証書遺言作成のためには、証人が2名必要となります。