紛争の内容
ご依頼者のAさんは埼玉県内に多数の不動産を所有し、その一部で不動産賃貸業を営んできました。
Aさんの法定相続人は3人の娘達。資産の多さからいっても、生前に相続を見据えた準備をしておくことは必須でした。
10年以上前に一度公正証書遺言を作成されていたものの、この遺言書は付き合いのある不動産業者の担当者が主導して作ったもので、Aさんとしては、自分の意向があまり反映されていないとの不満をお持ちでした。
そこで、この度、Aさんからご相談を受け、新たに公正証書遺言を作成し直すことになりました。

交渉・調停・訴訟などの経過
10年以上前に遺言書を作成した当時から現在までの間に所有物件の変動があり、Aさんご自身も正確な件数を把握されていなかったことから、まずは名寄帳を取り寄せ、所有している不動産の全体像を確定させました。
そのうえで、Aさんのご希望(長年同居して自分の世話をしてくれただけでなく、家業の分野でも貢献度の高い次女に多くを相続させ、長女・三女には遺留分に相当する評価額の財産だけを残したい)に沿って、各相続人に取得させる不動産、金融資産を割り付けていきました。
また、税制面で問題が生じることのないよう、懇意にしている税理士にも確認してもらったうえで、原案を完成させ、公証役場に予約を入れました。

本事例の結末
Aさんのご希望に沿った、新しい公正証書遺言を作成することができました。

本事例に学ぶこと
Aさんのように多額の資産を所有し、事業も営んでいる方の場合、生前の相続対策として遺言書の作成は必須といってよいでしょう。
なお、本件では次女と長女・三女との間で取得分にかなりの差が生じることから、遺言書の「付言事項」において、なぜそのような分配割合としたのか、これまでのAさん一家の事業の推移から次女の貢献度合いに至るまで、かなり丁寧な記載をしてフォローしました。このようなフォローをすることで、いざ相続が発生した時、長女・三女の理解も断然得られやすくなると思います。

弁護士 田中智美