紛争の内容
 AさんはB社株を多数所有し経営に関わっていましたが、このままAさんが亡くなってしまうと、B社と関係性がないAさんの親族にB社株が渡り、経営に支障が生じる可能性がありました。
 そのため、Aさんが亡くなったときには、B社株を後継者に遺贈したいとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 Aさんには推定相続人である親族がいらっしゃいました。
 そのため、Aさんの資産の大部分を占めるB社株を後継者に遺贈してしまうと、将来的に遺留分侵害額請求がなされる可能性がありました。

本事例の結末
 遺留分侵害額請求の対策として、予想される遺留分相当額には満たないものの、一定のまとまった預貯金を親族の方に相続させることとし、付言事項として、株式の代わりにお金を遺すことにしたこと、株式を遺贈するのはB社の経営のためであることを付記し、理解を求めることとしました。

本事例に学ぶこと
 上記のような条項・文言の工夫は、何かの理由で特定の財産を特定の人物に相続・遺贈させたいときに有用であると思われます。特に、特定の人物への相続・遺贈によって、遺留分が侵害される恐れがある場合には、その手当が不可欠となりますが、完全な手当が難しい場合でも、侵害を受ける者の納得を引き出すための交換条件や理由の説明などによって、法的なリスクをなるべく低くすることができます。