相続における遺言と遺留分の関係について、どちらが優先するかについて解説します

相続でしばしば起こる問題として、遺言書が一人の相続人がすべての遺産を取得する等の内容である場合に、他の相続人が遺留分を主張することがあります。この記事では、遺留分を侵害する遺言は無効であるのか?遺言と遺留分の関係について、どちらが優先するか?等について解説していきます。

遺留分とはなにか

遺留分とはなにか

遺留分とは、相続人(兄弟姉妹を除く)に法律上保障された最低限の取り分のことです。

兄弟姉妹には遺留分はありません。

例えば、相続人として子が4人いるのに、被相続人が「全ての財産を長男に相続させる」という遺言を残していた場合、他の子3名の遺留分が侵害されているので、他の子3名は一人だけ遺産をもらった長男に対して、遺留分相当額を金銭で支払うよう請求することができます。

これが遺留分侵害額請求です。

確認ですが、遺留分侵害額請求ができるのは、「兄弟姉妹以外の相続人」です。

被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないのです。

したがって、兄弟だけが相続人の場合で、とある兄弟に全部遺産を渡すという遺言があっても他の兄弟は文句を言えません。

遺言書とはなにか

遺言書とはなにか

遺言とは,遺言者の最終の意思を表したものです。

遺言を作ることによって、自分の財産について、誰に何を相続させるか、自由に決めることができます。

さらに, 財産に関する事項以外にも遺言で定めることができますが,遺言の内容に法律効果をもたらすことができる事項は、法律で決まっています。

なお、遺言は一度作成した後、いつでも撤回したり、違う内容に書き換えたりすることができ、作成日付の一番新しいものが有効となります。

遺言は文字で残すことを原則とし、後日の改変が可能な動画や録音データなどは認められていません。

遺言の種類には、まず大きく分けて、普通方式の遺言と、特別方式の遺言がありますが、一般的に使われるのは、以下の二つです。

●自筆証書遺言

遺言書とはなにか

本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したものです。 用紙は何でも構いませんが、代筆は認められません。

相続法の改正により、平成31年1月13日以降に作成するものについては、財産目録として添付する書面に限り、自筆によらない方法(パソコンによる作成や代筆、登記簿謄本や預金通帳の写しなどを添付する)でも作成できるようになりました。

また、新たに遺言書の保管制度ができ、法務局において適正に管理・保管してもらうこともできます。この場合、遺言書の紛失・亡失のおそれがありませんし、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄,隠匿,改ざん等を防ぐことができます。

●公正証書遺言

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者本人が公証人役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が筆記します。

そして公証人は、公正証書遺言の全文を、本人と証人に読み聞かせ、内容の正確さを確認し、それぞれの署名・捺印を求めます。これに、公正証書遺言の形式に従って作成した旨を公証人が記載し、署名・捺印して完成します。

遺言書が遺留分を侵害する場合の効力は?有効?無効?

さて、遺留分と遺言の意味がわかったところで、遺留分を侵害するような遺言は有効なのか?という疑問がわきます。遺言書が遺留分を侵害する場合の効力です。

結論として、遺言は有効になります。

あくまでも遺留分は相続人が最低限の財産を受け取ることができる「権利」です。したがって、権利を行使しない人もいます。遺留分を侵害する内容だからといって、それで遺言書自体が無効になることはありません。

遺留分と遺言はどちらが優先されるか?という質問をよくいただきますが、解説の通り、まずは遺言が優先されるが、遺留分侵害額請求という「権利」を行使することができるという回答になります。

したがって、遺留分を侵害するような内容の遺言がでてきた場合は、要注意です。

逆に、遺言を書く方も注意が必要です。

遺留分を侵害する内容の遺言書を作成するということは、相続時に相続財産をほとんど受け取れない、または全く受け取れない相続人が生じることになります。当然、相続人間で争いが生じるもとになるでしょう。

相続をきっかけに家族関係が悪化することもあるため、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する際には、遺産トラブルが発生することを考慮する必要があります。

遺留分侵害請求について

遺留分侵害請求について

遺留分侵害額請求のやりかたに決まりはなく、書面はもちろん、相手方に口頭でその旨を伝えるというやり方でも有効です。

しかし、遺留分侵害額請求には原則として「1年以内」という期限があります。

相手方に口頭で伝えただけだと、日時も残る形でしっかりした録音・録画でも撮っておかない限り、相手方に「聞いていないよ」と否定されればそれまでになってしまいます。

期限内に請求権を行使したという証拠をしっかり残しておくためにも、遺留分侵害額請求は必ず書面で、しかも、できれば配達証明付きの内容証明郵便で行うことを強くお勧めします。

上記を踏まえた、遺留分侵害額請求の内容証明郵便の書式・記載例をご紹介します 。

まとめ

まとめ

この記事を見ている方は、遺留分侵害請求でお困りの方や、どうやって請求したら良いかわからないという方がと思います。

そのような場合は、無料で弁護士に相談できますので、お困りの方はご相談ください。

ライン、電話、オンラインでの相談もできます。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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