紛争の内容
Aさんは、高齢になってきたことから、自分の死後の遺産分けについて考えるようになりました。
親族関係は、妻B、子C、それに前妻との間の子Dがいます。
遺産は、自宅マンション、それとは別の場所にある土地、預貯金や株式でした。
ご来所いただき、将来に備えて公正証書遺言を作成することとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
Aさんのご希望は、「土地は子Cに、自宅マンション・預貯金・株式は妻Bに」というものでした。
しかし、それだと、もう一人の相続人である子Dには何もいかないことになり、Aさんの死後、DがB・Cに対して遺留分侵害額請求をする可能性があります。
そこで、Aさんと相談のうえ、Dに対しては、事前に、現時点での計算で遺留分に相当する保険金が受給できるような生命保険に加入し、手当することにしました。

本事例の結末
まず、Dを死亡時受取人に指定した生命保険に加入。
そのうえで、「土地はCに、自宅マンション・預貯金・株式はBに相続させる」旨の公正証書遺言を作成。
遺言書の付言事項に、「Dには遺留分に相当する保険金を受け取ってもらえるよう手当してあるので、B・Cに対して遺留分侵害額請求をするのは慎んで欲しい」と記載しました。

本事例に学ぶこと
本件のAさんとDの関係性は悪くなく、Dを受取人に指定した生命保険に加入したことを知らせると、Dからは感謝の言葉が返ってきたそうです。
Aさんはまだまだお元気ですが、ご自分の亡くなった後に親族が揉める事態になっては…と心配されていましたので、今回、上記のような公正証書遺言を作成したことで出来る限りの対策を講じたことになり、安心していただけたのではないかと思います。

弁護士 田中智美