ご相談の内容
ご相談者様は、ある親族の方と長年同居して家族として暮らしてきましたが、この度、その親族の方が亡くなられてしまいました(以下、この親族の方を「被相続人」といいます。)。
ご相談者様は、被相続人から、生前、「遺言を書いておいたからね。私に何かあったら、自宅の私の机の引出しを開けてね」と言われていたため、後日その引出しを開けてみたところ、封がされ「遺言書」と書かれた封筒が入っていました。
ご相談者様がインターネットで調べたところ、手書きの遺言書がある場合には「検認」という手続をとらなくてはならないと知り、弊所にご相談にいらっしゃいました。

事件の経過
自筆証書遺言は、原則として、管轄の家庭裁判所で「検認」の手続をする必要があります。本件のご相談者様も、自宅内で保管されていた「遺言書」について検認手続を申し立てる必要がありました。
さて、検認の申立てを行う際には、遺言者の出生から死亡までの戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本のほか、相続人の戸籍謄本も集めることになります。
しかし、被相続人には子や孫がいましたが、疎遠となっており、現在どこに住んでいるのかも分からない状況でした。ご相談者様自身も、被相続人の親族ではありましたが、遠縁であり、相続人ら(被相続人の子や孫)のことはほとんど知らないとのことでした。
そこで、相続人の調査・戸籍等の取得も含めて、遺言書検認の申立てをご依頼頂くことになりました。

本事例の結末
無事に全相続人の戸籍等を集めることができ、遺言書検認の手続も滞りなく行われました。
なお、相続人らにも裁判所から検認手続が行われることの案内が届きますので、相続人らは出頭・出席して、遺言書の中身を確かめることができます。
本件では、疎遠であったためか、それとも遠方に居住していたためか、いずれの相続人も手続には出席しませんでした。

本事例に学ぶこと
自筆証書遺言は、遺言者にとって手軽に遺言を作成できる手段ですが、没後、家族や相続人に「検認」の手続の負担を負わせるものでもあります。
もしご自身に余裕があるのであれば、検認が不要な公正証書遺言での遺言作成や、同じ自筆証書遺言でも、法務局による自筆証書遺言保管制度のご利用をご検討頂くことをおすすめいたします(なお、法務局による自筆証書遺言保管制度を利用した場合も、遺言書情報証明書を取得したい相続人等は、被相続人や相続人らの戸籍等を集める必要はあります。)。
遺言書の作成、あるいは検認の手続、相続人の調査等、相続に関するご相談につきましては、手続上の細かい注意点などもありますので、ぜひ一度弁護士までご相談ください。

弁護士 申景秀
弁護士 木村綾菜