紛争の内容
ご依頼者様のもとに、疎遠になっていたお兄様の代理人弁護士より、亡くなったお母様の公正証書遺言があること、及び遺言執行者として当該弁護士が就任したことの通知が届きました。
その公正証書遺言には、すべての財産についてはお兄様に相続させる旨の遺言が書かれていました。
ご依頼者様は、遺留分が侵害されているのではないかと考えて、弊所にご相談にいらっしゃいました。
 遺留分とは、遺言によっても奪うことができない、相続人に最低限留保されている遺産の取り分のことです。
お母様の相続人は、子であるお兄様とご依頼者様の2人でした。
 したがって、ご依頼者様の遺留分は4分の1となります。
ご依頼者様は、遺言などによって全く財産が得られていない状況であるため、この遺留分が侵害されていることになり、遺留分侵害額請求の交渉事件を弊所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 本件では、相手方の弁護士(遺言執行者)から財産目録が開示されていました。
 しかしながら、この財産目録では相続開始時の預貯金の残高等しか分からなかったため、各金融機関から取引履歴を取り寄せ、生前贈与や不正な出金等が行われていないか確認を行いました。
 また、本件では、ご依頼者様はお兄様・お母様とは長年疎遠になっていたため、特にお母様の晩年の経済状況・生活状況が不明瞭でした。したがって、この点について相手方に問合せを行い、財産状況との照らし合わせを行いました。

本事例の結末
 上記のような確認作業を丁寧に行った結果、相続財産全体の金額や具体的な遺留分侵害額の計算について、ある程度納得できる状況となり、こちらから提案した金額通りの遺留分侵害額を支払ってもらう内容で、相手方と合意に至ることができました。

本事例に学ぶこと
 遺留分については争いになることも多く、弁護士に交渉などを依頼した方が良いケースも多くあります。例えば、本件のように相手方に弁護士がついているケースや、相続財産や生前贈与の調査をして欲しいケース、(本件とは違いますが)不動産などの評価が難しい相続財産があるケース、相続人が多かったり数次相続が起こっていたりするケースなどです。
 遺留分は、黙っていて貰える性質のものではありません。
 また、遺留分の請求には、相続の開始や遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから「1年」という期限があります。
 したがって、贈与や遺贈(遺言)によってご自身の遺留分が侵害されているかもしれないと思った方は、ぜひ弁護士までお早目にご相談下さい。

弁護士 野田泰彦 弁護士 木村綾菜