紛争の内容
ご依頼者様は、被相続人の相続人でしたが、遺言により相続人所有の不動産をすべて相続しました。
同じく相続人であった相手方は遺言により被相続人名義の預金をすべて相続しましたが、不動産の価格との間に大きな差が生じ、遺留分が侵害されたため、当方に対し、遺留分侵害額請求を行いました。

交渉・調停・訴訟などの経過
主な争点は、遺産である不動産の価格でした。
当方はまず、不動産の価格について固定資産評価額を基礎とするべきと主張しました。
これに対し、相手方は、不動産業者の査定に基づく金額を主張しました。
交渉による解決が時間や労力の点で望ましいと考えたことから、当方で不動産の査定をとり、その金額を基礎とするべきであると主張し、交渉を続けていきました。

本事例の結末
相手方も交渉による解決を望んでいたこともあり、不動産の価格について、双方の主張する金額の中間値の金額で遺留分侵害額を算定することで合意ができました。
その結果、当方が遺留分侵害額としておよそ1600万円を支払うという内容で合意を成立させることができました(不動産だけを相続したご依頼者様の手元には流動資産が少なかったため、相続した不動産の一部を売却して支払原資を作るまで、一定程度の期限の猶予も引き出すことができました)。
また、相手方が特例を利用して相続税申告を行えば、当方のご依頼者様が税金の還付を受けることができるということでしたので、その旨の条項も合意に盛り込むことができました。

本事例に学ぶこと
不動産の価格が主な争点となる事案では、双方の主張がかみ合わないことが多くあります。
しかし、そのような状況でも、相手方の主張や希望も十分考慮しつつ、主張するべきことは主張し、粘り強く交渉を行えば、当初よりもこちらに有利な条件で合意できる可能性があります。

弁護士 田中智美 弁護士 権田健一郎