紛争の内容

死亡したA氏の相続人は、Bさん・Cさん・Dさんの子3名でしたが、A氏は「Dに全ての遺産を相続させる」旨の公正証書遺言を残していました。

遺産の分配にあずかれなかったBさんは、Dさんに対して、遺留分を請求する旨の内容証明郵便を送付。

Bさんの依頼を受けて遺留分侵害額請求の調停を申し立てました。

交渉・調停・訴訟等の経過

調停の席で、Dさんは「遺留分を払わないといけないことはわかっているが、遺産の大部分は不動産であり、すぐに売ってお金に換えることができない」と主張。

確かに、本件での遺産構成は、不動産(土地)が主で預貯金はほとんどなく、しかもその土地の上には他の親族が所有する建物が建っていて、すぐには売却換価できそうにないという状況でした。

後日、別の相続人であるCさんも遺留分侵害額請求の調停を申し立てたため、事件は併合され、一緒に調停を進めることになりました。

このままでは、Bさん・Cさんともに遺留分相当額の支払いを満足に受けることができないことが予想されたこと、Dさんは遺言どおりに全ての遺産を取得することを希望しないと述べたことから、裁判所とも相談のうえ、遺留分侵害額請求ではあるものの遺産分割の形で決着を図ることにしました。

本事例の結末

遺産分割調停が成立。

内容は、「不動産をCさんが取得し、預貯金をDさんが取得する。CさんからBさんに対し、不動産を取得する代償として相当額を支払う」というもの。

本事例に学ぶこと

公正証書遺言がありながら、全相続人合意のうえで、その記載内容とは異なる遺産分割調停を成立させた例です。

遺留分の支払義務者となったDさんには、遺留分相当額を支払うだけの資力がありませんでしたが、後から調停に加わったCさんには資力があったため、Bさんは、Cさんから代償金の形で遺留分相当額を早期に回収することができました。

調停の中で3者がよく話し合い、柔軟な解決ができた好事例でした。

弁護士 田中 智美