本事例について

本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。

遺産分割の終了まで長期間(12年)かかったケース

被相続人は会社経営者で、その方が一代で築いた遺産総額は20億円以上でした。遺産の内訳は、自分(被相続人)の会社の株式、不動産が主なものでした。
相続人は、被相続人の配偶者と、子供が4名です。

このように多額の遺産がありながら、被相続人は遺言書を作成しておりませんでした。
また、遺産の株式のうち、被相続人名義ではく、相続人名義になっている株式が遺産に含まれるかどうかが争いになりました。

ある財産が遺産に含まれるのかどうか、つまり、遺産分割の対象となるのかどうか(上記の例でいえば、相続人名義の株式は、被相続人の遺産として、遺産分割の対象になるのかどうか)、について争いがある場合には、遺産確認の訴えという民事裁判を提起しなければなりません。

また、現在では、遺産確認の訴えを提起することになると、遺産分割調停については、調停員会から取下げ勧告がなされ、取下げることになりますが、この当時は、調停は中断したままの扱いでした。

この遺産確認の訴えは、相続税申告書の記載では遺産として申告したものですが、各相続人名義の株式は、各相続人のものとすべきだとして、この株式は遺産に含まれないことを確認するという訴訟でした。

この訴訟は、結局、平成17年に確定するまで争われ、結果は、遺産に所属するという判断となりました。
この訴訟中に、第1次相続の配偶者が死亡し、第2次相続が発生しました。

第2次相続の被相続人は、三男に全遺産を相続させるとの自筆証書遺言書がありました。ここで、第2次相続の共同相続人らが、遺留分減殺請求権を行使するなど、法律関係はさらに複雑となりました。
※ 遺留分とは、遺言によっても奪うことができない相続人の相続分のことを言います。遺留分は、原則として相続分の半分です。

平成20年には、調停不調となり、遺産分割審判に移行したのですが、遺産、相続人が多額、多数であること、意見の対立が甚だしかったことなどに加え、長期間かかったことから、審判がなされるまでに4人の審判官が人事異動などにより交替という事態にも遭遇しました。

結局、4人目の審判官(裁判官)が、遺産分割審判をしたのが、審判終結後の6ヶ月後でしたが、その内容については、共同相続人のだれも不服申立てをせず、平成21年に確定しました。
その後は、第1次相続における配偶者控除の特例を利用していたことからの、配偶者の相続分が確定しましたので、相続税の還付を受けることとなりました。

しかし、上記審判では、第2次相続の遺留分減殺請求については判断されなかったために、遺留分の問題はいまだ解決に至っていません。
本件では、第1次相続においても、遺言があれば、長期化は避けられたと予想されます。また、遺産総額が高額なため、当然、相続税対策をされるべき事案でした。

遺言書を書いておくことの大切さ、相続税対策をしておくことの大切さを改めて感じた事案でした。