事案の概要
被相続人には精神疾患があり、生前、両親以外との接点があまりない状態が続いていました。
被相続人には配偶者や子がなく、資産家であった父の遺産は母、被相続人へと順次引き継がれることになりました。
母が亡くなって以降は叔父が被相続人の面倒をみており、叔父は被相続人が亡くなるまでの間、病院通いや施設探し等に奔走し、定期的に被相続人と接触を持っていました。

主な業務の内容
相続財産管理人選任後、相続人や債権者を探しましたがいずれも現れず、多額の資産の行方が問題となりました。
唯一被相続人と接触のあった人物は叔父でしたので、叔父に対して特別縁故者への財産分与の申立ての制度について伝えたところ、その申立てがなされました。

本事例の結末
生前の被相続人と叔父との関係性を再度確認した上、家庭裁判所に対して叔父を特別縁故者として財産分与を認める旨の意見を述べました。
家庭裁判所もその意見を妥当と認め、叔父に対して財産分与を認める判断をしましたので、叔父に被相続人の資産を引き継ぎ、相続財産管理事件は終了となりました。

本事例に学ぶこと
多額の資産を有したまま亡くなり、かつ、相続人が存在しないというケースはままあります。
相続財産管理事件において、相続人も債権者も現れない場合、特別縁故者に対して財産を分与することができる仕組みが存在します。
特別縁故者と主張する者から財産分与の申立てがなされた場合、裁判所は相続財産管理人の意見を踏まえ、申立てを行った人物が被相続人の特別縁故者に該当するか、該当するとしてどの程度の財産を分与することが相当かという判断をします。
その判断にあたっては被相続人との接触状況を具体的に確認されることになりますので、当時の資料は手元に取っておくことが望ましいということになります。

弁護士 吉田竜二