紛争の内容
被相続人には、生前、保佐人が付いていました。
保佐人とは、成年後見制度のひとつであり、判断能力が著しく不十分な方に付いて、本人が重要な財産行為(例:不動産売買など)を行う際に同意をしたり、逆に何か重要な財産行為について誤って行ってしまった(例:不必要な借金など)という場合に取り消したりすることができる制度です。
保佐人に家庭裁判所から代理権が与えられた場合は、本人の代わりに預貯金の管理や定期的な出入金の管理、施設入所などの身上監護に関する法律行為などもできることになっています。
本ケースでは、被相続人は、20年程前に精神疾患が悪化し、判断能力が落ちてしまい、保佐人による援助を受けるようになりました。
保佐人は、以来、被相続人の預貯金や年金・施設費用の支出入を管理したり、被相続人の親族が亡くなったことによる遺産分割手続を行ったりして、被相続人の財産全体の管理を代理してきました。
その後、被相続人が亡くなったため、保佐人は相続人調査を行いましたが、被相続人が長生きされていたという事情もあり、相続人はいないということが判明しました。
しかし、保佐人としては、預かり管理している被相続人の財産を適切に引き継がなければ、保佐人業務を終えることができません。
そこで、保佐人は相続人不存在を理由として相続財産清算人の選任審判を申し立て、当職が相続財産清算人に選任されました。
交渉・調停・訴訟等の経過
保佐人の方から今までの経緯・財産管理状況と、立替費用等の事情を伺いました。
その後、保佐人から引き継いだ被相続人の財産の整理を行いました。
貸金庫の解約、介護保険料や後期高齢者医療保険料等の清算を行ったほか、裁判所と協議の上、立替費用の清算も行いました。
なお、今回の申立人は保佐人であり、保佐人としての報酬をもらっていたこともあって、特別縁故者としての相続財産分与の申立ては行われませんでした。
本事例の結末
全ての相続財産を清算し、残余部分は国庫に帰属させ、本件は終了となりました。
本事例に学ぶこと
執筆時点では、成年後見制度の見直しが検討されていますが、見直し後においても「財産を預かり管理する」という代理権を付与するケースはあり得るものと思われます。
被相続人が亡くなった際に保佐人や成年後見人等が財産を預かって管理していた場合には、保佐人等は相続財産を(原則として)相続人へ引き継ぐことになります。
しかし、本件のように相続人が不存在の場合は、相続財産清算人を選任して、その者に相続財産を引き継ぐ必要が出てきます。
今後、「相続人不存在の相続」というケースは増加するものと思われます。
場合によっては本件のような処理が必要であるということを、頭の片隅で覚えておいて頂ければと思います。
弁護士 木村 綾菜









