遺留分侵害額請求ケース1 遺言書で「全て次男に」、納得できない長男が遺留分侵害額請求を行った事例

関係性は良好だったのに、亡くなった父が残していたのは、まさかの「全ての遺産を次男に相続させる」という遺言書でした。納得できない長男は、次善の策として遺留分侵害額請求をすることに。果たして、長男は、無事に遺留分を取得できるのでしょうか。

事案の概要

被相続人鈴木太郎さんは、令和8年1月10日に亡くなりました。

太郎さんの遺産は、さいたま市内にある自宅土地・建物と普通自動車が1台、預貯金もあるはずですが金額は不明、という状態でした。

太郎さんの相続人は、長男の一郎さん、次男の二郎さん、長女の花子さんの合計3名です(太郎さんの妻は数年前に他界しています)。

太郎さんは、生前に公正証書遺言を作成しており、その遺言の内容は、
「全ての財産を次男の二郎に相続させる」
というものでした。

長男一郎さんからの相談

長男一郎さんからの相談

鈴木家の子供達は、いずれも大学卒業と同時に実家を出て就職し、それぞれ家庭を持っています。

太郎さんは持病を抱えながらも自立した生活を送っており、年相応の物忘れはあるものの、介護が必要な状態ではありませんでした。

3人の子供達との関係も良好であり、特別に二郎さんだけが太郎さんの面倒を看てきたという事情もありません。

このため、一郎さんは、太郎さんの遺した遺言書の内容に驚くとともに、「3人の中で一番実家の近くに住んでいた二郎が、父をうまいこと言いくるめて、遺産を独り占めできるような遺言書を書かせたに違いない」と考えました。

法律事務所に相談にいらした一郎さんは、「こんな遺言書は、絶対におかしいし、認められない。とにかく、この遺言書を無効にして欲しい」とお怒りでした。

遺留分侵害額請求事件として受任

遺留分侵害額請求事件として受任

一郎さんのお気持ちはごもっともでしたが、公正証書遺言の無効を主張するには、無効である旨を裏付けるだけの客観的な証拠が必要です。

しかしながら、本件では、太郎さんの判断能力に問題はなく、また、二郎さんが太郎さんを欺くなどして遺言書を作成させたことを示す証拠は何もありませんでした。

そこで、弁護士からは、「残念ながら、本件で遺言無効を主張することはできません。次善の策として、この遺言書が有効であることを前提に、二郎さんに遺留分侵害額請求をする方向で進めるべきです」とお伝えしました。

当初、一郎さんは、「遺言書が有効であること」を前提にしなければならないことに拒否感を示しておられました。

しかし、「遺言無効はどうしても難しいのですから、その点を見極めて次の行動に移さないと。遺留分の請求には時効がありますので、ぐずぐずしていると遺留分も請求できなくなってしまいますよ」とお話しすると、「そうなると、二郎が丸々得をすることになってしまう。それだけは何としても避けたいです」と前向きに考えてくれるようになりました。

結果、遺留分侵害額請求の交渉事件としてご依頼いただくことになりました。

交渉の経緯

遺留分侵害額請求権の行使

遺留分侵害額請求権の行使

さっそく、弁護士から、二郎さんに対し、遺留分侵害額請求を行う旨の内容証明郵便を送付したところ、二郎さんも弁護士を立てましたので、以降は、その代理人弁護士を通して交渉することになりました。

遺産の全容の把握

太郎さんの四十九日が済んだ後、二郎さんからは公正証書遺言の写しだけが送られてきている状態で、一郎さんは、「父の死後、通帳から何から二郎が抱え込んでしまって、不動産と車以外にどんな財産があるのか、全く分からない」と言っていました。

そこで、弁護士から、相手方代理人に対し、速やかに遺産の内容を開示するよう求めたところ、遺産目録と根拠資料(不動産登記簿謄本や残高証明書などの写し)が送られてきました。

これにより、預貯金の具体的な金額が判明し、また、太郎さんは生前に株式を購入していたことも分かりました。

明らかになった太郎さんの遺産の全容は、次のとおりです。

■自宅土地・建物(さいたま市内)
■預貯金 1500万円
■普通自動車1台 
■株式(一部上場企業のもの2銘柄)

具体的な遺留分の計算と請求

さて、遺産の全容が明らかになったところで、一郎さんの遺留分を計算するために、まずは、遺産の評価を決め、遺産の総額を確定する必要があります。

本件では、自宅不動産をどのように評価するかで、一郎さん・二郎さんの意見が対立しました。

二郎さんとしては、なるべく一郎さんに支払う遺留分の金額を少なくしたいですから、不動産の評価額も低い方が有利となります。

これに対し、遺留分を請求する側の一郎さんとしては、不動産の評価額が高くなるほど、請求できる金額も多くなるわけです。

当方(一郎さん側)は不動産業者による査定書を提示して「4500万円」を、相手方は路線価ベースでの計算として「3900万円」を主張し、しばらくは平行線が続きました。

しかし、一郎さんは、「ここでまとまらずに家庭裁判所に調停を申し立てるとなると、さらに時間も弁護士費用もかかるしなぁ。早く決着をつけて、気分的にもスッキリしたいです」と言い始めました。

そこで、弁護士から、相手方代理人に対し、こちらも一定程度譲歩するので、二郎さんの側も譲歩して欲しいと打診し、最終的には、自宅不動産を「4200万円」と評価することで合意しました。

お互いの主張金額の、間を取った形です。

これにより、本件における遺産の総額は、次のように決まりました。

自宅土地・建物(さいたま市内) 4200万円
預貯金   1500万円
普通自動車1台   100万円
株式(一部上場企業のもの2銘柄)   680万円
合計6480万円

本件における一郎さんの遺留分の割合は「6分の1」ですから、具体的な遺留分の金額は、
6480万円×6分の1=1080万円
です。

解 決

解 決

「二郎さんから一郎さんに対し、遺留分として1080万円を支払う」旨の合意書を取り交わし、無事に支払いを受けて、本件は終了となりました。

一郎さんは、「あの遺言書が出てきた時は驚きと怒りでどうしようかと思いましたが、とにもかくにも、これで、二郎に父の遺産を独り占めさせないようにできたので、良かったです」と満足そうでした。

遺留分侵害額請求 Q&A

遺留分侵害額請求 Q&A
ご相談者様

Q1 遺留分の割合っていくらなの?

グリーンリーフ法律事務所弁護士

A1 まずはご自身の法定相続分を計算して下さい。

そのうえで、

直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分×3分の1
それ以外の場合は、法定相続分×2分の1

が、遺留分の割合です。

ご相談者様

Q2 私は被相続人の兄なのですが、遺留分は請求できますか?

グリーンリーフ法律事務所弁護士

A2 兄弟姉妹に遺留分は認められていないので、残念ながら請求できません。

ご相談者様

Q3 遺留分には1年間の時効があると聞きましたが、1年以内に話し合いがまとまらなかったらダメなのでしょうか?

グリーンリーフ法律事務所弁護士

A3 そんなことはないです。
「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年」以内に遺留分侵害額請求権を行使しておけば、その後の請求権の消滅時効は5年と考えられています。

ご相談者様

Q4 遺留分侵害額請求権の行使とは、どのようにすればよいですか?

グリーンリーフ法律事務所弁護士

A4 法律上定められた方式はないので、口頭で伝えるだけでも効力はあります。しかし、後で、請求した/されていないの水掛け論になると困りますので、内容証明郵便を用いてしっかり証拠が残るようにすべきです。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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