自宅などで自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見したら、相続人は「遺言書の検認」と受けなければなりません。検認を受けない遺言書では不動産の相続登記や預金の払い戻しなどの相続手続きもできません。また検認を受けないまま遺言書を開封すると違法となって「過料」の制裁を適用される可能性もあります。

遺言書を発見したときのために、検認の意味や方法を知っておきましょう。

この記事では遺言書の検認について、弁護士がわかりやすく解説します。
自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した方はぜひ参考にしてみてください。

遺言書の検認とは、遺言書の存在や内容を家庭裁判所で確認し、保存するための手続きです。
遺言書が発見されても、その後隠されたり書き換えられたりする可能性があります。
検認を受けておけば、家庭裁判所で検認時の状態が保存されるので、後の隠匿や破棄などを防ぎやすくなります。

法律上、一定の遺言書が見つかった場合には遺言書の検認が義務付けられています。

2.検認が必要な遺言書

すべての遺言書の場合に検認が必要なわけではありません。検認が必要となるのは、以下のような遺言書です。

2-1.法務局に預けられていなかった自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆で書かなければならない遺言書です。
遺言者が自宅などの場所で保管しているケースと法務局に預けているケースがあります。
自筆証書遺言が法務局に預けられておらず遺言者が自分で保管していた場合、相続人が遺言書を発見したら検認を受けなければなりません。

2-2.秘密証書遺言

秘密証書遺言は、内容を秘密にしておける遺言書です。遺言者が自分で遺言書を作成し、公証役場でその存在のみを認証してもらいます。
秘密証書遺言は本人が自宅などの場所で保管しています。
相続人が秘密証書遺言を発見したら、家庭裁判所で検認を受けなければなりません。

2-3.検認が不要な遺言書

以下のような遺言書については検認が不要です。
・法務局に預けられていた自筆証書遺言
自筆証書遺言が法務局に預けられていて場合、検認は不要です。
・公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人に公文書として作成してもらう遺言書をいいます。
公正証書遺言は公証役場でその原本が保管されるので、破棄や隠匿のおそれがありません。
遺言者が保有しているのは正本や謄本という写しのみです。

公正証書遺言の場合にも検認を受ける必要はありません。

3.検認を受けずに遺言書を開封した場合のペナルティ

遺言書を発見したら、早めに検認を受けましょう。封入されている遺言書の場合、遺言書の検認を受けずに開封するとペナルティがかかる可能性があります。
具体的には「5万円以下の過料」の制裁を加えられるリスクが発生します。
遺言書を発見したら、開封せずに家庭裁判所で検認を申し立てる必要があります。

4.遺言書の検認の方法

遺言書の検認を受ける方法は以下のとおりです。

4-1.申立人

検認の申立ができるのは、以下の人です。
 遺言書の保管者
 遺言書を発見した相続人

4-2.管轄の家庭裁判所

遺言書の検認を行う家庭裁判所は、「遺言者の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所です。
検認申立人の居住地の裁判所ではないので、間違えないようにしましょう。

4-3.必要書類

遺言書の検認に必要な書類は以下のとおりです。
 検認申立書
申立人が自分で作成します。家庭裁判所のサイトの書式を参考にして、正しい方法で作成しましょう。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_17/index.html

 遺言者の出生時から死亡時までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本(戸籍や除籍の全部事項証明書
戸籍謄本類は本籍地のある役所で取得しましょう。
 相続人全員分の戸籍謄本(全部事項証明書)
本籍地のある役所で取得します。

なお上記は標準的な書類であり、ケースによっては別の戸籍謄本類などが必要となる場合もあります。

4-4.費用

検認にかかる費用は以下のとおりです。
 遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円
 連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所によって異なります。事前に電話などで確認しましょう)。

4-5.検認の流れ

遺言書の検認の流れは以下のとおりです。

STEP1 申立をする
まずは申立人が必要書類を集めて家庭裁判所へ提出しなければなりません。
事前に検認申立書や戸籍謄本類(全部事項証明書)などを集めましょう。
提出先は「遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。

STEP2 相続人へ通知が送られる
検認申立が受け付けられると、各相続人へ通知が送られます。
通知書には検認が行われる日時についての案内が記載されています。
また通知書が送られるタイミングは検認を申し立ててから1か月~1か月半くらいの時期になるケースが多数です。

STEP3 検認が行われる
指定された日に参加した相続人の立ち会いのもと、遺言書の検認が行われます。
検認の申立人さえいれば、他の相続人は出頭していなくても検認はできます。

STEP4 検認済証明書を申請する
検認が終了すると、遺言書に検認済証明書をつけてもらえます。
遺言書によって不動産登記などの相続手続きをするには、検認済証明書が必要となるので、必ず検認済証明書を申請しましょう。
検認済証明書をつけるには、遺言書1通について150円分の収入印紙が必要となります。

STEP5 相続人へ連絡される
検認日に家庭裁判所へ出頭せず立ち会えなかった相続人や利害関係者に対しては、家庭裁判所から検認が行われたことが通知されます。

4-6.検認にかかる期間

遺言書の検認申立てから検認期日までの期間は、特に申立て内容に不備がなかったケースで1~2か月程度です。ただし検認申立てをするには多くの戸籍謄本類が必要なので、準備にも1か月かかってしまうケースが多いでしょう。
遺言書を発見してから検認が終了するまでは、だいたい2~3か月程度かかると考えておくと無難です。

5.遺言書の検認の期限、放置するデメリット

遺言書の検認には、特に期限がもうけられていません。
しかし遺言書の検認はなるべく早めに行うべきです。
検認をせずに放置していると以下のようなデメリットがあります。

5-1.他の相続人から疑いの目で見られる

検認を受けずに特定の相続人が遺言書を保管し続けていると、他の相続人から「遺言書を偽造したのではないか」「遺言書に手を加えたのではないか」などと疑われる可能性が高まります。余計な相続トラブルを回避するため、早めに検認を受けましょう。

5-2.相続手続きを進められない

検認を受けない遺言書(法務局に預けられていない自筆証書遺言や秘密証書遺言)を所持していても、不動産の相続登記や預金払戻しなどの相続手続きができません。
検認を受けずに放置していると、相続手続きをいつまでも進められないデメリットがあります。

6.検認を受けても遺言書が有効とは限らない

遺言書の検認と遺言書の有効性に関しては誤解されるケースが多いので要注意です。
遺言書の検認と遺言書の有効性には直接的な関係がありません。
検認を受けた遺言書でも無効になるケースはありますし、検認を受けていない遺言書が有効であるケースも多々あります。
たとえば他の相続人が「この遺言書は検認を受けたから有効」と主張してきても、鵜呑みにする必要はありません。疑問点があれば、遺言無効確認などの手続きを検討しましょう。

まとめ

自宅などの場所で自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見したら、早めに家庭裁判所で検認を受けましょう。検認手続きの方法がわからない場合には、お気軽に弁護士までご相談ください。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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