紛争の内容
ご相談者様のお父様が令和6年6月に亡くなりました。相続人は、子であるご相談者様のみでした(お母様とは離婚済み)。
お父様は経済的にギリギリの生活をされていたこともあり、ご相談者様が把握できた範囲では、預貯金などの資産も、借金などの負債も、どちらも無いという状況でした。
その後、令和7年に入り、ご相談者様は債権回収会社から1通の手紙を受け取りました。
その手紙は、お父様には1000万円を超える借金があり、相続放棄の有無や意向を教えて欲しいという内容でした。
驚いたご相談者様は弊所にご相談にいらっしゃいました。
交渉・調停・訴訟等の経過
お父様が亡くなってから3ヶ月以上経過していましたので、相続放棄ができる期間である熟慮期間は過ぎてしまっていると考えるのが原則です。
しかしながら、お父様のその借金について、ご相談者様は全く知らないし、心当たりも無いということでした。また、当該借金についてご相談者様が把握するのは難しかった事情がありました。
そのため、弊所にて相続放棄の手続を受任することになりました。
本事例の結末
無事に相続放棄申述が受理され、ご依頼者様は借金の相続を免れることができました。
本事例に学ぶこと
多くの場合では、(厳密な言い方ではありませんが)被相続人の死亡後3ヶ月以内に相続放棄の手続をしなくてはなりません。
しかしながら、最高裁は、一定の場合には、借金や遺産などの相続財産の全部または一部の存在を認識した時を熟慮期間の起算点とする旨、判示しています。
本件は、資産も借金も無いと思っていたので相続放棄の手続をとらなかったところ、その存在を知ることが難しい借金が、後から判明したという事案でした。
最高裁の判示に照らせば、本件の熟慮期間は借金が判明した時、すなわち債権回収会社からの手紙を受け取った時から起算されるべきと考えられます。
このように考えて相続放棄の手続をとったところ、無事に受理されたということです。
本件は例外的なケースではありましたが、熟慮期間が経過していても、このように相続放棄が認められる可能性がある場合もありますので、もし判断に迷う状況がありましたら、一度弁護士までご相談されることをおすすめいたします。
弁護士 木村 綾菜