紛争の内容
Aさんは、物心ついた時には家庭内に父親がおらず、母一人子一人で今日まで暮らしてきましたが、ある日、「遺産分割協議に協力して欲しい」旨の手紙が弁護士から届きました。
驚いたAさんがその弁護士に問い合わせると、Aさんの戸籍上の父親Bが10年以上前に亡くなっており、Aさんも相続人の一人であること、父親Bの遺産分割が未了であるので、他の相続人5名との間で遺産分割について協議したい、とのことでした。
Aさんにとって戸籍上の父親Bは「見知らぬ他人」であり、その遺産分割のために全く面識のない他の相続人と話し合うなど、望んでもいないことでした。

交渉・調停・訴訟などの経過
父親Bには不動産を始めそれなりの遺産があるようでしたが、Aさんは相続を望んでいませんでしたので、相続放棄をすることにしました。
本件では、父親Bは10年以上前に亡くなっており、熟慮期間(3か月)を大幅に過ぎてからの申立となります。しかし、Aさんが父親Bの死亡を知ったのは、相続人の弁護士から通知書を受け取った日であり、幸い、その日からはまだ3か月が経過していませんでした。
戸籍関係書類を揃えるとともに、Aさん自身の陳述書(父親Bの記憶は全くなく一度も会ったことがないことや、父親Bの死亡を知るに至った経緯などをまとめたもの)を作成し、速やかに相続放棄の申立を行いました。

本事例の結末
無事に相続放棄の申述を受理してもらうことができました。

本事例に学ぶこと
3か月の熟慮期間を大幅に過ぎてからの申立では、必ず、申立人本人の陳述書を作成して、なぜこんなに遅い申立となったのか(生前の被相続人との面識・交流の有無、死亡を知るに至った経緯等)を裁判所に疎明する必要があります。本件でも詳細な陳述書を作成・提出したことで、裁判所に面談に呼ばれることもなく、書類審査のみで相続放棄を受理してもらうことができました。