紛争の内容
ご依頼者様のもとに突然、「相続人代表者指定届を提出してください」というX市役所からの手紙が届きました。送り主のX市役所は、ご依頼者様に縁もゆかりもない、遠方の地の役所でした。

この手紙には、被相続人であるAさんが亡くなり、ご依頼者様が相続人であること、AさんはX市内に不動産を多数所有しているらしいことが書かれていました。

しかし、ご依頼者様はAさんという人物に心当たりがありません。

どうしたら良いか困ったご依頼者様は弊所にご相談にいらっしゃいました。

弁護士からは、この「相続人代表者指定届」は、固定資産税などの納税義務を承認する届出であり、これを提出すると相続自体を承認したということになってしまうため、もし相続放棄を考えるのであれば提出は一旦見送り、相続放棄をするかどうか検討するべきであるとのご助言をいたしました。

その後、ご事情などをお伺いするうちに、ご依頼者様は相続放棄すると決心され、弊所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まず、弁護士にて戸籍の調査を行ったところ、被相続人Aさんは、ご依頼者様の伯母にあたる人物だということが分かりました。

ご依頼者様とAさんには全く面識が無いこと、Aさんに近しい親族・人物ともご依頼者様は交流が無いことが分かりましたので、ご依頼者様の「例え財産(不動産)があったとしても、どのような経済状況か分からないし、その遺産を当てにしたいという気持ちも無いので、相続放棄をする」というお気持ち・方針が再度固まることとなりました。

そこで弁護士より速やかに申立書類一式を整え、管轄の家庭裁判所へ申立てをいたしました。

本事例の結末
上記手紙を受け取ってから3ヶ月以内の申立てであったこともあり、本件は1週間程度でスムーズに受理されました。

本事例に学ぶこと
まず本事例でも出てきた「相続人代表者指定届」(※自治体によって呼び名が異なる可能性があります)については、お心当たりが無い場合には、役所からの手紙だからといって安易に返信しないようにご注意ください。

上記のとおり、相続の承認となってしまうと、相続放棄をすることができなくなってしまいます。

また、本件では、ご依頼者様は早期に相続放棄の方針を決心されましたが、もし財産状況を調べた上で相続放棄するかどうか考えたいという場合には、熟慮期間の伸長の申立てを家庭裁判所に行うことをおすすめいたします。

相続放棄には「3ヶ月」という期限がありますが、財産調査等のためにやむを得ず判断まで時間がかかるという場合には、家庭裁判所に事情を説明してこの期間を延ばしてもらうということができます。

熟慮期間伸長の申立ても「3ヶ月」以内に行う必要がありますので、相続放棄をするかどうか考えたいという場合にも、ひとまずアクションを起こすことが必要です。

特に交流の少ない人物の財産調査にはお時間や手間がかかりますので、こういった制度もあるのだということを覚えておいて頂ければと思います。

弁護士 木村 綾菜