紛争の内容
被後見人(Bさん)に対し、当事務所の別の弁護士が成年後見人として活動しておりましたが、当該弁護士が事務所を退所することになったため、家庭裁判所の許可と依頼者(Aさん、親族)のご希望を得て、当職が後任の成年後見人として業務を引き継ぐこととなりました。
また、被後見人Bさんは、その親族(Cさん)の死亡により、Bさん自身が相続人の一人となっていました。
この遺産について、他の相続人との間で遺産分割協議が必要となりましたが、被後見人Bさんには判断能力がないため、後見人である当職がBさんの代理人として遺産分割調停に関与することとなりました。
他の相続人との間で、遺産の範囲や特別受益の有無などについて意見の対立が見られ、調停による解決が必要となりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
まず、成年後見業務の引継ぎについては、前任の弁護士が事務所を辞めることになったため、当職が後任として業務を引き継ぎました。
引継ぎに際しては、事務所内の連携を活かし、被後見人の財産目録、過去の収支、および身上監護の記録について、詳細かつ円滑な情報共有を受けました。これにより、業務の空白期間を作ることなく、シームレスに後見業務を継続することができました。
その後、被後見人Bさんの代理人として遺産分割調停に臨みました。被後見人の財産を最大限守るという後見人の義務に基づき、当職は他の相続人に対して、法定相続分の主張を明確に行うとともに、被後見人Bさんが将来の生活で必要となる資金を確保できるよう、Bさんの利益を最優先した分割案を提案しました。
調停の過程では、当職が後見人としての中立的立場と弁護士としての専門知識の両面から、他の相続人の主張も聞き入れつつ、粘り強く調整を行いました。
本事例の結末
遺産分割調停は、被後見人Bさんの生活保障を最優先し、Bさんが相続分を確実に取得できる内容で円満に成立いたしました。
また、成年後見業務についても、事務所内の弁護士交代による引継ぎは極めて円滑に行われ、後見人の交替から、被後見人Bさんが関わる遺産分割調停の完了まで、滞りなく全てのプロセスを無事に完了することができました。
その後Bさんはお亡くなりになったので、後見業務を終了すると共に、ご親族に相続財産を円滑に引き継ぎました。
本事例に学ぶこと
成年後見人が被後見人を代理して遺産分割を行う場合、後見人は被後見人の利益を最大化するという非常に重い責任を負います。
弁護士が後見人として関わることで、複雑な相続問題においても、法律に基づいた公正かつ円満な解決が実現できることを示す事例です。
弁護士 申 景秀









