事案の内容

従前、専門家が成年後見人に就任していたが、本人が亡くなり、相続人もいないという状況となったため、成年後見人が裁判所に対して相続財産清算人の選任申立てを行ったという事案でした。

事件処理の経過

相続財産清算人に選任をされた後、従前の成年後見人から財産を引き継ぎました。

銀行預金、株式、投資信託、貸金庫内の物品と様々な財産がありましたが、その他、北海道に2つの不動産を所有していることが判明しました。

預金は解約、株式・投資信託は売却、貸金庫は内容を確認した上で売却可能物品については買取業者に売却と処理を進めていきましたが、不動産については過去に原野商法にひっかかり取得したと思われる土地でスムーズな売却は難しい状況でした。

一方の不動産については隣地で農業を営む人物が存在したため、接触を図ったところ、非常に廉価であれば引き取るとのことでしたので、裁判所の許可を得て当該人物に売却しました。

もう一方の不動産については隣地も含めまったく使用されていない状況であり、隣地所有者に声をかけましたが不要とのことでしたので、売却の方向性は諦め、相続土地国庫帰属制度の利用を検討することとしました。

本事例の結末

制度利用にあたり担当部署に問い合わせを行ったところ、現地測量等の指示を受けたため、現地の業者に協力を仰ぎ必要書類を収集した上で制度利用申込みを行いました。

土地柄一年の大半について積雪があり、現地調査可能な時期が限られるといった事情があったため、審査には時間がかかりましたが、結果として国庫帰属が認められ、不動産の処理も終了となりました。

相続人は存在せず、債権者も少数、特別縁故者なしという状況でしたので、債権者に支払いを行った上で残余財産については国庫に引き継ぎ事件終了となりました。

本事例に学ぶこと

清算すべき相続財産に不動産が含まれる場合、通常は売却を試みますが、不動産の性質によっては買い手がつかないということがあります。

不動産が処理できないがために長期間にわたり清算人において管理を継続しなければならないという事案が存在しますが、上述した相続土地国庫帰属制度を利用することでそのような不動産について処理が可能となる場合があります。

弁護士 吉田 竜二