紛争の内容
ご依頼者様を含むご兄弟様が、亡くなられたご親族の相続人となりましたが、調査の結果、多額の負債(債務)があることが判明しました。

そのため、ご兄弟様全員が相続放棄を希望されました。しかし、ご兄弟様はそれぞれ遠方の異なる地域にお住まいであったため、全員が集まって手続きを進めることが困難な状況でした。

特に、法定の熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)が迫っており、迅速な対応が求められていました。

交渉・調停・訴訟等の経過 
相続放棄の手続きは、相続人それぞれが、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要がありますが、必要書類の収集、作成、提出には多くの手間と時間がかかります。

当職は、まずご依頼者様を窓口としつつ、他のご兄弟様とも個別にオンライン(電話・ビデオ会議・メール等)で綿密に連絡を取り合いました。

  1. 必要書類の収集支援: 遠方にお住まいのご兄弟様に対し、戸籍謄本などの必要書類の取得方法や、郵送によるやり取りを詳細に指示し、スムーズな収集をサポートしました。
  2. オンラインでの意思確認: 相続放棄の意思確認、申述書の署名捺印、および添付書類の確認は、オンライン会議やセキュアなファイル共有を通じて迅速に行い、遠隔地であることによる手続きの遅延を防ぎました。
  3. 同時進行での申述: ご兄弟様ごとに必要な申述書を作成し、熟慮期間内に確実に家庭裁判所へ提出できるよう、各ご兄弟様の状況を把握しながら手続きを同時並行で進めました。

結果として、ご兄弟様全員の申述が期間内に滞りなく行われ、家庭裁判所から全員分の相続放棄申述受理通知書が無事に発行されました。

本事例の結末
相続人同士が離れて暮らしているという地理的な障壁を、オンラインでのきめ細やかなサポートと連携で克服し、法定期間内にご兄弟様全員の相続放棄を完了させることができました。

これにより、ご依頼者様及びご兄弟様は、多額の負債を負うリスクから解放されました。

本事例に学ぶこと
相続放棄は、熟慮期間という厳格な期限があるため、相続人が遠方に分散している場合や、疎遠である場合でも、迅速な意思疎通と書類の準備が不可欠です。

本事例は、現代のITツールを駆使し、弁護士が中心となって相続人全員との連携を密に取ることで、地理的な制約を乗り越え、期限内に手続きを完了できることを示しています。

迅速かつ確実な手続きのためには、専門家によるサポートが極めて有効です。

弁護士 申 景秀