本事例について

本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。

納税のことを考えずに作成した遺言

Aさんの所有する財産は、自宅とアパートと畑、それに金融資産のすべて合わせて合計約5億円、Aさんの相続人は妻と長男と長女の3人でした。Aさんは自分が亡くなった時に、相続争いが起こってはならないと思い遺言を残しました。その内容は自宅とアパートは長男、畑は配偶者、金融資産は長女という内容でした。

Aさんが亡くなり、この遺言どおりに相続しましたが、Aさんの長男は約1億円の相続税を支払わなければならなくなり、長男にはお金がないので、お母さん(Aさんの妻)が相続した畑を売却して相続税を支払うことになりました。

その結果、お母さんが売却した畑には譲渡所得税がかかり、また、長男がその譲渡代金を1億円使ってしまったのですから、「贈与税の対象になる」と税務署に言われてあわてて相談に来ました。

結局、この1億円はお母さんから借りたことにして、金銭消費貸借契約書を作成して贈与税の課税は免れたわけですが、その後お母さんが亡くなった時には、この長男への貸付金1億円は、お母さんの相続財産として相続税の対象となってしまいます。

このように相続税のことに配慮しない遺言は、相続税の納付に困ってしまうことがよくあります。このケースで畑を長男が相続していれば、譲渡所得は軽減され、また、お母さんが相続した財産には相続税はかからないというケースでした。
遺言の作成には、相続税の納付のことも考えなければなりません。