紛争の内容
依頼者の実弟は、多額の融資をした前代表者に代わり、前代表者の会社の代表取締役に就任し、その役員報酬で、貸付金の返済を受けているようなものとの説明を実弟から受けていたとのことです。
実弟の方には、配偶者もなく、子もなく、第二順位の直系尊属もないことは、数年前の、実兄の相続事件の依頼を受けた際に、すでに調査済みでした。この資料がパソコン上にpdfとして残っていたことが戸籍関係書類の取得に大いに助かりました。
依頼者は高齢者施設に入所していましたが、その近しい方から、実弟が代表を務める会社の従業員から、代表者死亡の連絡が入り、同従業員らによると、会社の存続などの対応をしてもらいたいようであったとのことでした。
正式依頼の要請を受け、同施設に赴き、面談し、面倒にかかわりたくないこと、自らの生活は安定していることなどを聴取し、正式依頼を受け、管轄裁判所に相続放棄申述受理の申立てのご依頼を受けました。
依頼者は、高齢で、自ら戸籍関係書類をそろえることができないということでした。
それらの取得も、当事務所の業務となりました。
被相続人も、依頼者も、都内の同じ住所地に本籍を有しておりました。
依頼者は埼玉県の方ですが、被相続人は他県の方でしたので、その住所地を突き止め、管轄裁判所を調べました。
相続放棄申述受理の申立てに当たっては、被相続人の財産は、預金あるだろうが、その多寡は不明。不動産の有無は不明。しかし、会社代表者として、会社運転資金の借入の連帯保証人の可能性はあるから、相当額の負債があると推測されると報告しました。
本申立の理由として、依頼者は経済的に余裕もあり、生活が安定していることを上げました。
本事例の結末
相続放棄申述受理の申立ては、相続人が、相続人であること、相続財産のあることを知って3か月以内に行わねばなりません。
第三順位相続人であることから、戸籍関係の追跡も、昨今の郵便事情を考えると、3か月以内に全部揃えることができるか心配でした。
しかし、5年以上前に依頼を受けた遺産分割事件の、pdf資料がパソコン内に残っていたため、それを手掛かりに、戸籍関係書類を速やかにそろえることができました。
必要証類一式をそろえ、申し立てを行いました。
ほどなく、相続放棄申述受理の通知書が送付され、併せて、相続放棄申述受理証明書の申請書類が同封されてきました。
依頼者との打合せで、証明書は3通を取得しておくとしましたので、3通の交付申請を行い、入手しました。
本事例に学ぶこと
相続放棄を検討される方は、経験上多くは、被相続人の債務超過を承継しないためという方がほとんどでした。
しかし、最近は、被相続人の社会的地位などから、余計な紛争に巻き込まれるのを危惧した方が生活の平穏を維持するための方策として、相続人とならないことを選択する方が見受けられます。
また、独居の高齢者の方からの相談ご依頼もありますが、お身体の事情から、戸籍関係書類の取得が困難だとして、その取得、すなわち、戸籍関係の連続の追跡を求める方もあります。
相続発生による相続人の方のご事情はそれぞれですが、まずは、当事務所への電話での相続相談をお受けになることをお勧めします。
弁護士 榎本 誉









