紛争の内容
被相続人A氏は、自宅をある会社(かつてA氏が役員を務めていた会社)の物上保証に入れた状態で死亡。

A氏には配偶者も子もなく、唯一の相続人であった弟も相続放棄したため、相続人不存在の状態となりました。

そこで、自宅の抵当権者である業者Bが相続財産清算人の選任を申し立て、私が清算人に選任されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
相続放棄した弟から自宅の鍵を送ってもらい、A氏の自宅を探索しましたが、わずかな預貯金の他、目ぼしい金融資産はなく、かえってカードローンや税金の未払いが80万円ほどある状態であることが分かりました。

一番大きな相続財産は自宅不動産であり、これを売却換価して抵当権者(申立人である業者B、被担保債権約1000万円)に弁済する必要がありました。

自宅の売却にあたっては、業者Bにも買受人探しで協力してもらい、最終的には、こちらで探してきた候補者との入札方式で高い金額を提示した方に決め、売却換価しました。

本事例の結末
自宅を売却換価したお金で業者に被担保債権を全額弁済することができました。

残りのお金(預貯金含む)は立替事務費と清算人報酬に充てられて余りがなかったため、その他の負債(カードローンや税金の未払い)については弁済できないまま、清算終了となりました。

本事例に学ぶこと
このようなケースでは、申立人(抵当権者)は1円でも多く債権回収を図るために、手続き費用をかけて清算人選任を申し立てているわけですから、抵当権者と協力して、なるべく高い価格で不動産を売却するのが清算人の腕の見せどころです。

弁護士 田中 智美