親が亡くなったが負債の方が多いので相続放棄がしたい・・・
遺言で、山林や農地を押しつけられたので相続したくない・・・
疎遠の兄弟が亡くなって、相続の順番が流れてきたので困っている・・・
最近よく聞く法律相談です。
相続放棄は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼すべきなのでしょうか?
実は、相続放棄の申述自体は、裁判と比べて難易度は低いと言えますので、自分で手続きをすることも可能です。専門家に依頼する費用が捻出できない場合はご自身で行う必要があるので、手続きについて埼玉の弁護士が解説します。

相続放棄はどこに申し込めば良いのか

相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所で、「相続放棄の申述」をします。

★参照★家庭裁判所のホームページ
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

どこの裁判所で申込をするのでしょうか。
申述先の「管轄」というのが法律で決まっており、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で行うことになります。

★参照★裁判所の管轄を調べたい方はこちら
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html

例えば、亡くなった方の最後の住所が東京23区であれば、申述先は東京家庭裁判所になります。
さいたま市であれば、さいたま家庭裁判所という具合です。ただし、地域によっては、「支部」があるので要注意です。

埼玉県で言うと、久喜市、加須市、幸手市、白岡市、南埼玉郡(宮代町)は、管轄が「さいたま家庭裁判所久喜出張所」になりますし、越谷市であれば、さいたま家庭裁判所越谷支部という具合です。
上記の管轄表で、管轄を調べて間違えないようにしましょう。

どういう場合に相続放棄を検討すべきか

単純な話で、「相続をしたくない」という場合に相続放棄を検討します。
人によって、理由は様々です。今までの法律相談・ご依頼では、以下のようなお悩みを抱えている方がいらっしゃいました。
・財産より借金の方が多い
・売れない山林や土地が多く、相続税が払えなさそう
・売れないや農地を遺言で無理矢理押しつけられた
・疎遠の親族の財産など相続したくない
・亡くなった方と疎遠なので関わりたくない
・他の親族と争うのが嫌だ、遺産分割に参加したくない

実は、どのような理由であれ、相続放棄は可能です。
・自分は財産がたくさんあるので相続財産はいらない
・弟にすべてあげたいので自分は辞退する

このような理由でも相続放棄が可能です。

相続放棄をしたどうなるのか?

法律的な説明をすると、民法第939条では、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されています。

つまり、相続人ではない=被相続人(亡くなった方)の権利や義務を一切受け継がないということになります。
借金もつながないし、財産もつがないということです。
それなので、家だけ相続したいとか、宝石だけ形見でほしいということもできないことになります。

相続放棄の申述書の書式

裁判所のホームページで公開されているので、ここでダウンロードするのが簡便です。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

書式のダウンロードの、「相続放棄申述書」をクリックすれば、PDFファイルで書式がダウンロード可能です。
また、書式の記入例の、「記入例(相続放棄(成人))をクリックすれば、書式の書き方を見ることができます。

さいたま家庭裁判所の場合はこちらをご参照ください。
https://www.courts.go.jp/saitama/saiban/fc-tetuzuki/index.html

相続放棄の費用はいくらかかるか

専門家に依頼しない場合は、裁判所に払う実費や、戸籍の取得費のみです。

・収入印紙 800円
・郵便切手 申述人1人につき470円(内訳:84円5枚、10円5枚)
(※さいたまの場合)

なお、当事務所の弁護士が代理で相続放棄を行う場合は、15万円(税別)がかかります。
(事案が複雑、複数人の場合は要相談)

この記事を見てもよくわからない、不安だから任せたい、確実に相続放棄をしたいので一任したいという場合は、ご連絡ください。
当事務所では、相続専門チームの弁護士が、事件を進めていきます。

相続放棄の申述に必要な書類

1.相続放棄の申述書
2.戸籍謄本等(以下に記述します)

※ 同じ書類は1通で足ります。
※ もし、申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、その戸籍等は、申述後に追加提出するケースもあります。

用意する書類はそう多くはありません。戸籍は、自分が相続人であることがわかる範囲のものが必要となっています。

【共通で必要な書類】

・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・申述人(放棄する方)の戸籍謄本

【申述人が、被相続人の配偶者(夫・妻)の場合】

・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【申述人が、被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】

・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【申述人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいらっしゃる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続放棄の条件とは

相続放棄の申述は、相続人が相続開始の原因たる事実(被相続人が亡くなったこと)及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に行わなければなりません。

ただし、「相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるとき」などは、相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば、相続放棄の申述が受理されることもあります。

もし3ヶ月を過ぎてしまったら、一度専門家にご相談ください。

相続放棄にかかる時間

必要書類を集める時間は人それぞれなので、裁判所への書類提出からどれくらい時間がかかるかを記述します。

相続放棄の書類を裁判所に提出してから(郵送でも、窓口でもOK)、1週間程度で、ご自身の住所宛に、「相続放棄の意思確認」の書類が裁判所から届きます。

これは、本当に相続放棄の申述をするのかどうかの再確認の意味があります。
簡単なアンケート形式になっているので、回答して裁判所に送り返します。

そうすると、1週間~10日程度で、郵送で「相続放棄申述受理通知書」が到着します。
これで、相続放棄の申述は完了です。

まとめ

結局、相続放棄をするには、
・相続人となったことを知ったときから3ヶ月以内に、
・管轄の裁判所に、
・申述書や戸籍を提出

以上が、手続きの流れになります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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