紛争の内容
40代の独身男性が自宅で病死した。
相続人は不存在であることから、被相続人の親族が申し立てた事件
交渉・調停・訴訟などの経過
・相続財産の管理の引継ぎを行い、自宅の売却処分。
・自死ではないが、重大な病気を患っていなかったので、「不審死」の履歴のある物件として、売却。
・残置動産類の業者買い取りを経て、管理財産の換金、預金としての保管。
・債権者への対応を終え、相応の管理財産を形成した。
・墓仕舞をすべく、菩提寺に訪問したが、同時では、当時は、無縁の方の永代供養は執り行うが、檀家信徒の方の永代供養は行わないとのことであった。申立人としても、本家である申立人家の紹介で、墓地を設けたので、申立人としても、管理人による墓仕舞には反対の意向であった。
・申立人が、特別縁故者として財産分与の請求がなされた。
・分与を求める財産額は管理人に付与される報酬を除いた残余全額というものであった。
・当管理人は、被相続人と申立人との親族関係、年齢の近い、幼馴染以来の交友であり、被相続人の相談に乗り、専門家を紹介したなどの関係があるが、全額の分与を受けるほどの寄与はないこと、被相続人の墓地を引き継ぎ、祭祀の承継の希望は表明していたが、その他特段の事情がない限り、分与は不相当との意見を裁判所に提出した。
・同意見に対し、申立人から、今後の供養、被相続人の墓地が、本被相続人の両親と被相続人のみが祀られていることや、親戚の関係にある申立人が、本祭祀の承継をし、相当期間の年次回忌法要を行い、その後墓仕舞いをして、永代供養を遂げたいという強い希望があると表明した。
・原審裁判所は、金300万円の財産分与を認めるとの審判をした。
・同審判に対し、申立人は不服申立てをなした。
・高等裁判所は、500万円の分与を相当とし、同決定は確定し、管理人として同金額を分与した。
・管理人の報酬の付与を受け、残余を国庫に納付した。
本事例の結末
・特別縁故者への分与審判の問題があったが、めでたく、残余財産を国庫に納付した。
本事例に及ぶこと
・特別縁故者としての、財産分与の拒否、相当額の判断は個別事情により、非常に困難。
・本件では、申立人の求める分与額は莫大過ぎたとの印象。
・歴史ある寺院では、檀家を離れられることに消極的であったが、申立代理人も危惧していた「離檀料」もテーマにならなかった。他方、宗教行為であるため、寺院側からも明確な数額の提示はなされなかった。ただ、祭祀承継者の、今後の当該寺院での年次のかかわり、とその際の布施の相場観を探り、上記の分与認定額程度の認定は欲しいと現実的に考えたようであった。

弁護士 榎本 誉